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*むかしむかし日々は穏やかに刻まれていく小鳥が囀り草葉は風にそよぐ まるで昨日がそのままそこにあるように 滑らかに移行し続いている 大気を貫いてくる朝日のなかを同じように 二人は家を出る そして逆方向に歩き出す おじいさんは山へ おばあさんは川に それぞれ向かう 互いの仕事をするために 高く澄んだ斧音を響かせながら おじいさんが汗を拭っている頃 爽やかな風になびく川面を眺めながら おばあさんは鳥の口笛に合わせて洗濯していた 何も変わらない 変わる必要もない日々 退屈で鈍重なものが幸福であることを二人は知っていた 日常はさざなみのように続く 変わるのは季節だけでよいのだ
移り変わっていく季節はその記憶だけを堆積し
刈るための枝木を育て 大地に潤いを与える 囀る小鳥たちは微笑を育て 世界を彩る そしておばあさんは今日も洗濯をする 川の水が冷たい日も暖かい日も洗う いつもの太陽 いつものそよ風 なのに、とおばあさんは首を傾げる 日常と非日常の狭間で そのとき、川上の異物が目に入る どんぶらこっこ どんぶらこ それが近付くにつれ驚きは増すばかり 大きな大きな桃が一つ流れてきた おばあさんは日常から一歩踏み出し 躊躇する暇もなく手を伸ばし 目の前で拾い上げた そして 洗濯も手に付くはずはなく 足元で力無く揺れる草葉を尻目に 大急ぎで家に帰った そのときおばあさんは何を思ったろう 川はいつも通りに流れ 囀りが響き
太陽は輝いていた
日常はさざなみのように続いている おばあさんを除いて - 23 -
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